
―思い出に残る患者さんとのエピソードをお聞かせください。
〔加那子先生〕医師になって2〜3年目になると、任される仕事量も増えて忙しくなります。そんな頃に、分娩を担当した患者さんとの出会いが私を変えてくれました。ある当直の晩に、分娩のために呼び出されました。そのときの私はまだまだ未熟だったため、こんな夜中に呼び出されるなんて…と不満な気持ちでした。しかも、初産の患者さんであったために、上手にいきむことができずに、普通の分娩よりも時間がかかり、私の不満感はさらに広がっていました。無事出産を終えた数日後に、その患者さんから、生まれた赤ちゃんが書いたという設定で手紙をいただきました。「上手に出て来れなくてごめんなさい。加那子先生が取り上げてくれて嬉しかったよ」読んだ瞬間に、自分のことばかり考えて、患者さんの気持ちに気がつかなかった未熟さを痛感し、反省しました。それからは、患者さんとの接し方が大きく変わったと思います。
―開業されて一年経ちますが、どのようなことをお感じになりますか?
〔院長:明弘先生〕
開業してみて感じたことは、思ったよりも不妊や妊娠の相談が多いということです。簡単な妊娠相談までを含めると、患者さんの7割近くが、不妊や妊娠について悩んでいたり、関心を持たれていることになりますね。不妊治療の認知度が高まってきていることを実感しています。
〔加那子先生〕
女性の先生で良かった。話しやすかったと言われることが増えましたね。実は、開業前は女医であることに抵抗感がありました。同じ女性だからというだけで、患者さんに過大な期待をされてしまうのではないかと考え過ぎている部分があったんでしょうね。抱える症状や気持ちは人それぞれですから、同じ女性だから、患者さんと100%共感できるわけではありません。しかし、想像力を働かせて、患者さんの立場に近づこう、患者さんを理解しようという気持ちが日増しに強くなり、気負いが取れてきたように思います。これからは、女性の私だからできることに目を向けて行きたいですね。
―不妊治療を始める患者さんへのアドバイスをいただけますか?
〔院長:明弘先生〕
基礎体温表をつけるなど、普段からご自身で管理をしていただいていると、治療もスムーズです。治療の経験がある方は、これまでの治療の経歴をメモしておくと、同じ検査を省略できたり、これまでにうまくいかなかったことを繰り返さずに済む上、その治療経過を元にこれからの治療計画を立てることができます。ときには不妊治療そのものがストレスになったり、治療が生活の中心となってしまう方もいます。「治療をお休みしている期間に、自然に妊娠できた」という話も聞きますから、焦らずに、充実した日常生活の中に上手に治療を取り入れていただきたいですね。妊娠が成立した時には、僕も本当に嬉しいんですよ。自分の子供ができたような気持ちになります。おこがましい言い方ですが、自分が介入して芽生えた命ですから。本当にやりがいを感じます。