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アゼリア・スタイル

アゼリア・ストーリー 第4回 PART-1
関谷俊郎さん (麻生ジャイアンツ総監督)

川崎市麻生区に拠点を置く「麻生ジャイアンツ」は、2007年にアメリカメジャーリーグにチャレンジした元読売ジャイアンツ桑田真澄投手が会長を務めるボーイズリーグ(中学生の硬式野球リーグ)のチーム。2005年3月から公式戦に参入以降、桑田会長自らが考案する練習方法を実践し、わずか3年で県内屈指の強豪チームに成長した。
今回のazalea storyは2回にわたって麻生ジャイアンツをご紹介。第1回は総監督を務める関谷俊郎さんに、麻生ジャイアンツの3年間の取組、そしてこれからについてお話をうかがった。(取材日2007年12月9日)
▲自分の経験や知識を地域の子供達の為に

桑田会長の決断は早かった。「是非やりましょう」

―チーム立ち上げのキッカケについて教えて下さい。

私が現役(明治大学野球部OB)で練習をしてきた頃と比較して、大学の野球部も根性論的練習方法から脱却し、科学的練習メニューや体のメンテナンスが取り入れられるようになっています。野球界は進化してきました。

ところが息子が野球をするようになって、一親として練習を見に行くと、そこでは目を覆いたくなるような旧態依然とした練習が行われていました。野球界の大事なすそ野であるはずの小学生、中学生の指導方法は、まだまだ時代に取り残されていることに驚きました。それまでは仕事場と家の往復だけで、地域コミュニティとの接点がなかったのですが、親にとってわが子への教育は一生に一度。自分の経験や知識を生かして地域コミュニティの中でお役に立ちたいと考えました。

▲桑田真澄会長と私が同じ思いを持っていたんです

一方で桑田真澄会長もご自身の息子さんが野球を始められ、同じような思いをされていました。ただ、桑田会長は現役のプロ野球選手。思いはあっても何から何まで自分でやることはできない。そんな時、私と桑田会長が同じ思いを持っていることを知った共通の知人が「一度話し合いをしてみたらどうか」と二人の間を取り持ってくれました。2004年の7月のオールスター休みの時です。ジャイアンツ球場で桑田会長と始めてお会いして、私なりの思いをお話しました。わずか90分。桑田会長の決断は早かった。「是非やりましょう」これが麻生ジャイアンツ立ち上げのキッカケです。


▲一緒にプレーし、ひとり一人を大切に指導をしたい

ひとり一人に愛情を持って目を配り、一緒にプレーして見せる

―現在のチーム構成を教えて下さい。

来年新たに入る選手については60名の応募があり、初めて20名まで拡大しましたが、これまでは各学年15名の選手で構成してきました。15名と言うと少ないように感じられる方が多いかもしれませんが、それには理由があります。麻生ジャイアンツには現在9名のコーチがいますが、このコーチ陣で目が行き届く範囲が概ね1学年15名ということです。コーチは元プロ野球選手や社会人・大学まで野球を経験してきた人などで構成していますが、ひとり一人に愛情を持って目を配り、一緒にプレーして見せながら指導するにはこの人数が適当だと言う判断があったからです。目が届かないから「後は走っておけ」のような指導はできない。


▲子供の可能性を限定してしまう練習はしたくない

ベースランニングの練習は基本的に1回だけ

―独特の練習方法について教えて下さい。

他のチームと比較して特徴的なことは、全ての選手がポジションを限定しないで全てのポジションの練習をすることです。キャッチャーはキャッチャーの練習しかしないのではなく、ショートの練習もセンターの練習もします。未来ある子供の適正を限定するようなことはしない。もちろん試合ではポジションを決めなくてはいけないので、その時点の適正として決めますが。サードゴロを捕ってファーストへ送球する。この練習はピッチャーの投球練習に通じるというのが桑田会長の考えです。したがって練習は参加人数に応じてグルーピングしてローテーションしながら全員が同じメニューをこなします。また、練習メニューは全て桑田会長が作成したメニューです。今年はメジャーに挑戦してアメリカにいましたが、メールで必ず練習メニューが送られてきます。

また、練習は量をこなせばいいというものでもありません。もう少しやりたいなというくらいでやめておく。最初は親御さんから「こんな練習量で?」という疑問も寄せられました。選手は練習したことを吸収して初めて意味があります。練習メニューを吸収するためには抜くことを覚える練習では意味がありません。もう少しやりたいという量でやめるのが良いのです。ちなみにベースランニングの練習は基本的に1本だけ。実践ではやり直しはできないですから。試合で実践するための練習をするわけです。

▲規律正しくあるが、笑顔が溢れる練習

挨拶は基本。怪我で野球を断念させない

―指導方針について教えて下さい。

当たり前のことですが、挨拶や返事といった基本的な礼儀は徹底して指導しています。社会性を身につけることは野球人としての大前提です。但し、練習そのものは笑い声が聞こえるような練習であるべきだと思っています。

また、怪我の未然防止、万が一怪我をしてしまった場合のアフターフォローには特に気を遣っています。今日も2人ボールを投げさせない子がいます。通常の練習メニューをこなせないほどではない肩の違和感ですが、少しでも違和感があれば別メニューで調整させています。残念ながら怪我で野球を続けられなくなる選手は少なくありません。麻生ジャイアンツでは、怪我の未然防止に気を遣っているので怪我でチームを去った選手は一人もいません。


▲まずは子供の良いところを褒めてあげるところから・・・

「怒る」のではなく、「叱る」

―指導されていてご苦労はどんなところにありますか?

中学生という時代は学年ごとに差異が大きいんです。1年生は小学生と変わらない部分を持っているけど、3年生になると大人と変わらない。2年生ぐらいだと反抗期を迎える子がいるとか。学年ごと、成長に合わせて指導していかないといけない。そのあたりには苦労します。

ただ、どの学年の子供に対してもまずは良いところを褒めてあげることが大事ですし、注意する場合でも我々が感情的になって「怒る」のではなく、「叱る」つまり諭す姿勢が重要だと思っています。

川崎市に硬式野球の練習場を増やして欲しい


▲スポーツを通じた市民活動に大きな期待をもっています

―川崎市と麻生ジャイアンツの接点で思うことはありますか?

麻生ジャイアンツの総監督として、市行政には是非お願いしたいことがあります。それは川崎市には硬式野球ができるグラウンドが圧倒的に少ないので、是非増やしてほしいと言うことです。

麻生ジャイアンツも練習場を求めて、遠くは中井町や南足柄市、大田区まで足を運んでいます。硬式野球の練習をするには非常に困難な環境です。サッカーでは川崎市にフロンターレが根付き、サッカーをする子供達はフロンターレを応援し、結果として川崎市に対する愛着も芽生えています。とてもいい循環だと思うんです。

ところが硬式野球場に恵まれない野球をする子供達は、野球ができる環境を求めて横浜市や町田市のチームに入ってしまう。横浜市にはたくさんの硬式野球チームがありますが、川崎市には私たちが所属する日本少年野球連盟所属のチームは2チームしかありません。

汗を流して練習し、大会に臨んだ地域に対しては、思い入れが強くなるのは当たり前。硬式野球場を整備することは、市民としてのアイデンティティーを育てることにも繋がると思います。スポーツを通じた市民活動は大きな成果をあげられると信じています。

次回は「麻生ジャイアンツ Part2 桑田真澄さん」です。3月上旬公開予定、お楽しみに!

* * *

麻生ジャイアンツプロフィール

2004年8月にプロ野球の桑田真澄選手(当時読売ジャイアンツ)と関谷俊郎氏(現総監督)が発起人となり立ち上げられた麻生区のボーイズリーグチーム。

2004年10月に日本少年野球連盟に所属。2005年3月より公式戦に参入する。強豪ひしめく神奈川県の各大会において、優勝(1期生・3期生)、準優勝(2期生)という好成績を収めている。

http://www.asao-g.com/index.htm


読売ジャイアンツ球場

よみうりランド内にあるプロ野球の読売ジャイアンツの練習グラウンド兼二軍の本拠地球場。1985年に完成。4000人の集客が可能。

最寄り駅は京王相模原線の京王よみうりランド駅、小田急線の読売ランド前駅。

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