〜テーラーアイハラBESPOKE.I〜伝統の中に見る遊び心「HOLLAND & SHERRY」で仕立てる
2009年の特集で、ハイクオリティー生地メーカーとして名高いチェルッティのシモーネ・グイッチャルディーニ氏との対談を行った、青葉台「BESPOKE.I テーラー・アイハラ」の相原優歩店長。今回は1836年創業、イギリス高級服地マーチャントとして、170年以上の長きに渡り、世界中に高品質な服地を提供している、「ホーランド&シェリー」のテキスタイルデザイナーであり輸出部長でもある、ブライアン・グローブ氏を招き、「ホーランド&シェリー」の魅力や最新コレクションの特徴、オーダースーツにこだわりを持つ日本の顧客に対してのメッセージなど、大いに語っていただいた。(取材日2012年4月4日)
「ホーランド&シェリー」とはまさに伝統と技術の代名詞
ブライアン氏へのプレゼントとして「ホーランド&シェリー」と共通の魅力を感じる物をご用意されたと聞きました。
[相原さん] はい。寄木細工の箱をプレゼントとして持ってきました。寄木細工は、縞や市松など日本の伝統文様を木で寄せた物で、200年近い歴史を持つ日本の伝統工芸品です。「ホーランド&シェリー」は創業から170年以上ですよね。この長い歴史の中に、しっかりとした伝統と技術が息づいています。また、手に持ってこそその遊び心がわかる所も、この寄木細工との共通の魅力を感じましたので、ぜひブライアンさんにお渡ししたいと思ったんです。
[ブライアンさん] とてもきれいですね。どうもありがとうございます。「ホーランド&シェリー」は社名にもある通り、オランダがルーツの家系のホーランド一族が始めた会社です。ロゴに「THE FINEST CLOTHS IN THE WORLD」と入っていまして、世界一いい生地を作って売ることが創業からのコンセプトとなっています。「ホーランド&シェリー」のコレクションは、年間平均で約3000パターン以上にも上るのですが、その中に「Escorial(エスコリアル)」という特殊なウール素材があります。18世紀にさかのぼりますが、スペイン王室がウール(羊毛)だけれどカシミアに近い素材ができないかということで、それを受けた農場主が品種改良を重ねて小ぶりで大変上質な羊を作りました。その羊毛で紡いだ糸はまるでカシミアのような柔らかさと艶を表現してくれます。「ホーランド&シェリー」は、現在でもその羊を育てているたった一つの農場から独占で毎シーズン羊の毛を買取り、素材を作っています。余談ですが、今秋はエスコリアルのストールも展開する予定です。このようにとことんこだわって良い物を作ることが私たちの特徴であり、魅力だと思ってます。
名前をストライプに見えるように織り込むことができる珍しい技術があるそうですね。
[ブライアンさん] 30年ぐらい前から始めたサービスなのですが、お客様のお名前やイニシャルなどご希望の文字をストライプに細かく織り込むことができます。特殊な機械で作る「ホーランド&シェリー」にしかない技術です。ご自身のお名前を織り込んだ、世界に一つだけのオリジナルスーツを作る人も多いのですが、会社名を織り込んでスーツを作り、従業員にプレゼントした社長さんもいらっしゃいましたよ。来シーズンは、この特殊な機械を使って12星座のシンボルマークを隠れ織りにした「ZODIAC WEAVING」というコレクションを発表します。本日持参したこの素材は、ネイビーの下地に黒の糸でマークを織り込んだ、ぱっと見は無地に見える素材ですが、近い位置や太陽の光が当たった時などマークが浮きあがって見えます。そういったさりげないこだわりを表現してみました。
▲光を当てると浮かび上がる星座のマーク
[相原さん] 男のこだわりって、意外とさりげなさがお洒落のポイントになったりするんですよね。例えば、ネームを内ポケットの上部に入れるのではなく、襟の裏に入れたり、ボタンを一か所だけ色違いを使ったり。そうそう、ブランドのタグを手縫いの千鳥縫いにするのも評判がいいですよ。この「ZODIAC WEAVING」という12星座の隠し織りの生地もベース色とマークの配色、その大きさが絶妙で、男心をくすぐるデザインになっています。当店でも主力商品として扱いたいと思っていますよ。
細い糸を使ってしっかりと織ったイギリス素材は日本人の気質にマッチする
イギリス素材の特徴は何でしょう?
▲Super150’s、160’sの極細番手のコレクション
[ブライアンさん] 縦横双糸といって、糸を贅沢にたくさん使用して織っていきますので、しっかりとした仕上がりになります。もちろん風合いは糸の細さや織り方で様々ですが、極細番手で織られた素材は繊細で光沢があり、仕上がりの立体感とあいまって、より高級感が漂う点がイギリス素材の特徴であり、「ホーランド&シェリー」が作り出す物の魅力でもあります。総体的にイギリス素材は、持つとやや重みを感じる事もありますが、着ると驚くほど軽くて動きやすいスーツができあがります。
[相原さん] 世界2大素材と言われるのがイギリスとイタリアです。イタリア素材は柔らかく、動きの中で魅力を発揮する素材が多いのですが、やや耐久性やシワに弱いのが欠点です。それに対しイギリス素材は耐久性と張り感があり、服そのものの立体感を表現しやすいのです。イギリス素材は硬くて無骨なイメージを持たれている方も多いのですが、実はブライアンさんがおっしゃっていたような極細番手の、例えば「Dragonfly」や「Cloudy Bay」といったコレクションの素材は決して硬くはありませんし、無骨でもありません。非常にエレガントな素材なのです。直接お客様と接していて感じるんですが、本来はイギリス素材の方が日本人の几帳面な気質には合うような気がするんです。
日本で春夏に人気の高い素材はどういったものですか?
▲「LUXURY & EASY CARE」がコンセプト
[ブライアンさん] 高級感と手入れのしやすさが特徴の「CAPITANA」が人気です。カシミアをミックスした高級感のある艶に、その高級感を極力損なわないように厳選した上質なポリエステルを使用することにより防シワ性を発揮します。また、表面に撥水、防汚加工を施してありますので、梅雨のある日本には最適です。その他にも、「Snowy River Lightweight」や「Cape Horn Lightweight」といった糸を強く撚る事でシワになりづらく、通気性の良い夏素材もあり、こちらも人気です。いずれも湿度の高い日本には最適です。
[相原さん] 今日私が履いているオレンジ色のパンツは「Cool Breeze」というコレクションの生地で仕立てたものですが、とても肌触りが良く、涼しいです。また、このようなパンツに最適なカラフルな単色ウール地が多くラインアップされているのも「ホーランド&シェリー」ならではですね。トレンドの明るめな色も豊富にあり、若い世代にも憧れの「ホーランド&シェリー」を着たいという人が増えています。
[ブライアンさん] とても嬉しいですね。去年の夏はライトブルーのストライプ生地の人気が高かったですよ。ここ数年はグレーでもライトグレーといった明るい下地にストライプが入った素材の需要が非常に増えています。
伝統を守りながら新しいものを取り入れる姿勢が長く愛される理由
定番として残す素材、新しく入れる素材はどれぐらいの割合で変更するのですか?
[ブライアンさん] 先ほどお話したように、「ホーランド&シェリー」の大きな特徴の一つは世界一とも言われるコレクションの豊富さです。毎年変更する素材は数種類ありますが、3年に1度は大きな見直しをして、定番として半分を残し、もう半分は新しい素材や色に変えていきます。10年ぐらい前まではダークな色がメインでしたが、明るい色を増やしたら、とても評判が良かったんです。
[相原さん] 確かにトレンドの明るめの紺やブルー系のラインアップは非常に増えましたね。その他にも、ブラウンにスカイブルー、紫にピンク、グリーンにブラウンといった他ではあまり見る事の出来ないデザインや色の組み合わせもあり、懐の深さに驚かされます。さらに、下手をするとおじさんくさいと言われてしまいそうなヴィンテージ感たっぷりの柄も刷新せずに残しているところが凄いです。実はこのようなヴィンテージ柄は意外と若い世代にうけるんです。彼らからすると新鮮な柄なのですね。
暑い夏を楽しく快適に乗り切るためのお勧めの素材はどういった物ですか?
[ブライアンさん] 南国リゾートのまぶしい光や陽気さを感じさせる「KEY WEST」というコレクションの麻素材がお勧めです。グリーンやオレンジ、ブルー、紫などの明るい色が大好評です。テーラードジャケットに限らず、シャツ感覚の軽い仕立てのジャケットなど、カジュアルなアイテムを作ってほしいですね。手に持っていても軽いですし、必要な時はさらりと羽織ることができます。麻素材はしわになりやすい特性がありますが、「KEY WEST」はストーンウォッシュ調の色合いなので、しわも目立ちにくいんです。ジャケット向けの素材はワンシーズンで終わりにする物が多いのですが、このコレクションは人気が高いので、来年も続けるかもしれません。
[相原さん] 日本の夏はCOOL BIZが推奨され、スーツを着用しない方が多くなってきていますが、その反面、ジャケットのオーダー需要がここ数年非常に高まっています。「ジャケットは既製品で」などと言う方もまだいらっしゃいますが、実はジャケットこそオーダーで仕立てて頂きたいと思っています。より遊び心のある自分なりのデザインの物を作れますし、芯地の使い方ひとつでもテイストが全く変わってきます。素材もとにかく豊富です。「ホーランド&シェリー」でも、「KEY WEST」の他にも、コットンのみのコレクションやサマーウールのジャケット地、カシミアやシルク混のコレクションなど、実に豊富にラインアップされているのです。生地を選ぶだけでも一苦労ですよ(笑)
オーダースーツの良さは気にいった素材を使って個性を表現できること
若い世代にオーダースーツのニーズが高まっていることに対してどう思いますか?
[ブライアンさん] 以前は年代や会社での役職の変化によって、既成のスーツからパターンオーダースーツ、オーダースーツと変わっていきましたが、今は若い人が早い段階からオーダーのお店に足を運んでくれていますね。オーダー業界への生地供給を主軸に据えている当社にとっては本当に嬉しいことです。オーダーの場合、まずは素材を決めてからディテールをどうするか決めていきますが、若い人はちょっと悩むかもしれませんね。そんな時は相原さんのようにお客様のニーズを的確にとらえてアドバイスしてくださるプロフェッショナルに相談することが大切だと思います。
[相原さん] 年代やライフスタイルによって好きな物、求めている物が違いますので、お客様とのお話の中からニーズを吸い上げて提案できるように常に心がけています。「この人はこうだ」というふうに勝手にあてはめたくないので、イタリア素材が好きな人にイギリス素材をお勧めすることも場合によってはありますよ。それぞれのテイストを味わってもらうことによって、両方の良さを実感していただけますから。お客様のお洒落の幅を広げられるような提案を続けていきたいですね。
最後にオーダーに興味のある若い世代の人たちにメッセージをお願いします。
[ブライアンさん] 背伸びをしてほしいということではありませんが、どこにでも堂々と着ていくことができる1着を持ってほしいですね。良い物、本物を身に付けてほしいんです。ぜひ「ホーランド&シェリー」の素材を使って、こだわりを詰め込んだ1着を作ってください。
[相原さん] 「ホーランド&シェリー」の伝統と技術が表現されたコレクションの中には、よく見ると遊び心がたくさん詰まっています。まずは実際に手にとって素晴らしさを体感してください。
[ブライアンさん] オーダーの良さは、体型に合ったものができることはもちろん、襟幅や袖幅、パンツの太さやウェストラインの絞り方、その他にも裏地やボタンや糸色と、細かいところまでこだわって作れることです。若い人だからこそ、自分ならではの個性的な洋服を作ってみてはいかがでしょうか。若い人も多く訪れるアイハラさんでオーダーの楽しみを味わってください。
HOLLAND & SHERRY FAIR ホーランド&シェリー フェア 6/9 sat 〜 6/17 sun
■スーツ上下お仕立て上がり |
| Cool breeze | ¥110,250 | → | ¥68,250 |
| Capitana | ¥110,250 | → | ¥72,450 |
| Mille miglia | ¥195,300 | → | ¥103,950 |
| Snowy river lightweight | ¥216,300 | → | ¥126,000 |
| Dragonfly lightweight | ¥228,900 | → | ¥136,500 |
| Dragonfly | ¥315,000 | → | ¥187,950 |
| Cashique | ¥630,000 | → | ¥357,000 |
■ジャケットお仕立て上がり |
| Cotton classics | ¥97,650 | → | ¥59,850 |
| Key west | ¥97,650 | → | ¥61,950 |
| South pacific linens | ¥101,850 | → | ¥66,150 |
■先行受注!
今秋からのコレクション及び商品を先行受注致します。
- ○ZODIAC WEAVING(12星座隠し織り)
→ フェア大特価 (価格は店頭にて)
- ○エスコリアルスカーフ(メンズ・レディース共用)
→ フェア大特価 (価格は店頭にて)
取材協力:イタリアンレストラン GRATIA (青葉台)
青葉台駅から徒歩5分のイタリアンレストラン「GRATIA」。シェフが厳選した食材を使ったこだわりのメニューの中でも、釜焼きピザは特に絶品だ。